当院には睡眠時無呼吸症候群に精通した医師と臨床検査技師が在籍しています。外来での簡易検査と入院での精密検査でしっかりと診断をし、入院でのタイトレーション検査(それぞれの病状に合わせた治療機器の設定)のうえCPAP療法を開始しております。治療開始後は外来通院で経過観察を行います。治療開始後1年経過でオンライン診療(自宅や職場で診療を受けられます)での経過観察も行っております。
毎日のCPAP治療の継続は決して簡単ではありません。当院ではしっかりとサポートを行うことで、多くの患者さまが安定してCPAP治療を継続できています。
初めてのいびき・無呼吸の相談から他院の治療でうまくいっていない方までお気軽にご相談ください。
初めて当院の睡眠時無呼吸外来を受診される方は完全予約制ですので080-6536-4241で必ずご予約をお取りいただき、事前にWeb問診をご入力の上ご来院ください。
いびきとは?
「ガーガーガー」…
いびきは隣で寝ている人に迷惑をかけているだけと思ってませんか?
自分ではあまり気がつかないけれど、周りの人に「いびきがうるさい」と言われたことはありませんか?
いびきは周りの人に迷惑をかけるだけでなく、 本人の身体にもよくありません。
いびきとは一体どのようなもので、どんな危険があるのか調べてみました。
いびきのメカニズム
呼吸の通り道である『鼻・のど』のどこかが狭くなると、いびきをかきやすくなります。
いびきをかくこと自体が病的な状態といえます。
また、いびきは身体のコンデイションに影響されます。
たとえば、深酒をしたり、過労があれば、いびきをかく方はいるでしょう。
しかしながら、常日頃からいびきをかく方、特にいびきといびきの間に呼吸が止まってしまうような方は睡眠時無呼吸症候群の可能性があり、要注意です。
さらにこの病気を厄介にしているのは、睡眠中のできごとのため、いびきはご自分ではなかなか気が付かず、迷惑をかけていること自体がなかなか認識されないことです。
いびきに関わる鼻・のどの病気
先述のように、呼吸の通り道である『鼻・のど』のどこかが狭くなると、いびきをかきやすくなります。
ここでは、いびきの原因となる『鼻・のど』の病気や形態について、いくつかあげてみましょう。
- アレルギー性鼻炎
- ダニ・ほこり・花粉などの特定の抗原に反応して鼻水やくしゃみが起こり、鼻がつまります。
- 鼻中隔弯曲症
- 左右の鼻の穴を隔てている壁(鼻中隔)が曲がって、鼻がつまりやすくなります。
- 慢性副鼻腔炎
- いわゆる『蓄のう症』をさし、慢性的に粘調な鼻水が出たり鼻がつまったりします。
- 鼻茸
- 慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が原因で、鼻の中にポリープができています。
- 肥厚性鼻炎
- 特定の原因がなく鼻の粘膜が慢性的に炎症を起こして腫れています。
- アデノイド増殖症
- 鼻の奥の扁桃(アデノイド、図のA)が肥大して鼻を後ろから塞ぎます。
小学校低学年まで肥大して、成長とともに小さくなります。 - 口蓋扁桃肥大
- 口をあけた時、のどの奥の左右に見える扁桃(口蓋扁桃、図のB)が肥大しています。一般的に『扁桃腺』といえば、口蓋扁桃を差します。
いびきをかきやすいひとの特徴
- のどちんこ(口蓋垂、図のC)が太くて長いひと。
- 口蓋垂から左右の扁桃まで続く粘膜のひだ(口蓋弓、図のD)が
幅広く、幕が垂れ下がっているように見えるひと。 - 舌の奥(根元)の扁桃(舌扁桃、図のE)が肥大しているひと。
- 舌そのものが大きく、厚く盛り上がっているように見えるひと。
- 下あごが小さく後ろに引っ込んで、舌が後ろに落ち込みやすいひと。
- 肥満で首が太く、のどが狭いひと。
成人のいびき・こどものいびき
成人のいびきは、先述のように鼻/のどの病気や骨格/のど周囲の形態に肥満が絡んだものが原因としてあげられます。
一方、こどものいびきは肥大した扁桃腺やアデノイドにより発症します。
その為、成人と異なり一般的な治療法としては、肥大した扁桃腺の摘出やアデノイドの切除となります。お心当たりのある方は、一度耳鼻咽喉科での検査/治療をお勧めします。
こどものいびきに注意を!
- 毎晩いびきをかく
- ダラダラ食い、食が異様に細い
- 口にこもるしゃべり方をする
- 声が異様に小さい
- いつも眠そうにする
十分な睡眠がとれないと、成長ホルモンの分泌が悪くなり、正常な発育が妨げられる恐れがあります。
以上、『鼻・のど』を狭くする病気や形態をあげてみましたが、ひとつの病気やひとつの箇所が単独で原因になっているというよりも、実際はいくつかの疾患や箇所が複合して、いびきをかく原因となっている場合のほうが多いようです。
気になる箇所があった方は、お近くの耳鼻咽喉科に相談してみるとよいでしょう。
SAS(睡眠時無呼吸症候群)とは?
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上繰り返される状態と定義されます。
主に、いびきや昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などの症状があります。
また、SASは生活習慣病と密接に関係しており、放置すると生命の危険に及ぶこともあります。 また、SAS特有の眠気は交通事故を起こす危険もあり、早期に適切な治療をすることが大切です。
SASの原因と症状
睡眠時無呼吸は、上気道(空気の通り道)が閉塞することにより起こります。
閉塞の原因は、
- 首周りの脂肪の沈着
- 扁桃肥大
- アデノイド
- 気道へ舌が落ち込む
- 舌が大きい(巨舌症)
- 鼻が曲がっている
- 自覚症状
-
- 日中の眠気
- 起床時の頭痛
- 熟睡感がない
- 夜間に何度も目が覚める
- 夜間に何度もトイレに行く
- 記憶力の低下
- 集中力の低下
- インポテンツ(ED) …等々
- 他人から指摘される症状
-
- いびき
- 睡眠中の呼吸の停止
- 集中力の低下
- 会議中の居眠り …等々
また、欧米人のSAS患者さんは肥満の方がほとんどですが、日本人のSAS患者さんは顎が小さい(小顎症)ため、気道がふさがれやすく、 やせているのにSASを発症している方もいます。
SASの患者さん全員が太っていると思うのは間違いです。
SASが引き起こすもの
SASにより引き起こされるものは大きく分けて2つあります。
一つ目は、いつのまにか寝てしまうことによる、交通事故や労働災害であり、患者さん自身とその周囲のひとに影響が及んでしまいます。
二つ目は、生活習慣病の発症や悪化を引き起こし、患者さん自身の寿命を短くしてしまう可能性がある、ということです。
交通事故や労働災害
2003年に起こった山陽新幹線の運転士居眠り事件に代表されるようにSASは大きな労働災害を引き起こす原因になっています。
そのため、厚生労働省・国土交通省・警視庁がSASに対する取り組みをはじめています。
また、重症SASの患者さんは健常者と比べて、交通事故発生率が約3倍になるというデータもあります。
生活習慣病の発症と悪化
近年では、高血圧や心臓病、糖尿病など生活習慣病とSASの因果関係がいろいろな研究からわかってきました。
その結果「SASは生活習慣病を呼ぶ!」と言われるようになりました。
健常者と比べて中等症以上のSAS患者さんは図に示した疾患になりやすいとの報告があります。
いずれにせよ、働き盛りの30~60歳代の世代が「ある日突然亡くなってしまう」という危険性をSASははらんでいるのです。
SAS(睡眠時無呼吸症候群)の診断の流れ
基本的な診療の流れ
医療機関受診
問診
問診では、眠気の程度、既往歴、鼻の疾患、夜間トイレの回数など自覚症状だけでなく、「いびき」「睡眠中の呼吸停止」など自分ではわからないこともお尋ねすることがあります。
可能であれば初診時のみ、奥様など夜間一緒にお休みになられている方が同席されることが望ましいです。
検査
鼻腔通気度検査や鼻咽腔ファイバー検査、レントゲン検査を行い、鼻やのどに狭窄部位がないか確認します。必要に応じて、血液検査やCT検査を行うこともあります。
実際に睡眠時無呼吸があるかどうかの検査は2つの方法があります。
呼吸状態を簡易的に判断できる自宅での簡易検査と、睡眠状態と呼吸状態を総合的に判断する入院検査「終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査」があります。
基本的にはまず自宅での簡易検査を行い、SASが疑われる場合、入院PSG検査を行います。
自宅での簡易検査
入院PSG検査
治療方針決定
定期的受診
自宅での簡易検査
入院PSG検査
夜間の睡眠と呼吸状態を、図のような専門の検査機器を使用し、SAS専門の検査技師が一晩近くに寄り添う形で精密検査と診断を行います。
主に終夜睡眠ポリグラフ(PSG)と呼ばれる検査機器を使用します。
脳波、呼吸状態、動脈血酸素飽和度、体位、心電図などを同時並行で測定します。
取り付けるセンサー類はたくさんありますが、針をさすなどの痛みを伴うものはありません。
検査装置を体に複数つけているため窮屈に感じるかもしれませんが、なるべくリラックスして、いつもの睡眠をとるようにしてください。
【1の部分】
無呼吸に伴う脳波上の覚醒が分かります。きちんと深い眠りがとれているか、無呼吸によって脳が頻繁に起きていないか(覚醒反応)などを測定します。
【2の部分】
呼吸の状態が分かります。無呼吸や低呼吸が何回あるか、どのくらいの時間止まっているか。
【3の部分】
無呼吸に伴う血中酸素濃度の低下の程度が分かります。無呼吸・低呼吸により動脈血の酸素濃度がどの程度下がっているか。
当院での入院検査の流れ
受付
検査当日はお食事をすました上で、19時までにお越しください。
シャワー室
検査開始前にシャワーを浴びてお待ちください。
装着
20時から検査機器の装着を開始します。
就寝
22時消灯です。ゆっくりお休み頂いているあいだに、しっかりと精密検査を行います。
起床
8時間検査を行い、6時起床です。
入院PSG検査の方は、解析したデータを後日予約外来でご説明いたします。
CPAPタイトレーション(治療機器の調整)での入院の方は、治療機器の使用方法の説明を受けていただき、適正な圧力に設定した治療機器をお持ち帰りいただきます。
お疲れ様でした。
SAS(睡眠時無呼吸症候群)の治療について
病状の程度にもよりますが、治療は3つにわけられます。
睡眠時無呼吸症候群は怖い病気ですが、きちんと治療すれば、無呼吸、眠気などの症状はコントロールでき、合併症も改善が望め、快適な生活を送ることができます。
CPAP療法
CPAPとは、Continuous Positive Airway Pressureの略で、持続陽圧呼吸療法という、鼻から専用のマスクを通じて、気道に空気を送り込み気道を広げておくことで呼吸停止を防ぐ治療です。睡眠中のみ使用します。
効果が高く、副作用が少ない為、SASの治療法として確立している療法です。
高血圧などの合併症の予防、改善効果があると立証されており、全世界でSASの治療法としてもっとも普及している方法で、健康保険適応となっており、3割負担の方で、月額約5000円です。
ただし、アレルギー性鼻炎・鼻中隔弯曲症などの鼻閉疾患がある方は、CPAP療法とともに鼻の治療も並行して行います。
CPAP療法を毎日一定時間行うことで、重症のSASの患者さんでも、日中の眠気が激減するだけでなく、合併症や交通事故による死亡率が低下することが報告されています。
外科治療
無呼吸の責任部位が明確な場合に推奨されます。
小児の睡眠時無呼吸症候群の大半は口蓋扁桃肥大とアデノイド増殖症が原因で、そのため口蓋扁桃摘出術とアデノイド切除術が有効です。全身麻酔で行う手術です。
成人の場合は、責任部位が複数あることが多く、また肥満を合併しているケースも多いため、手術適応には慎重な判断が必要です。また肥満を合併した重症のSASの患者さんの場合は、手術そのもののリスクが高いことも念頭においておく必要があります。
口蓋扁桃摘出術やアデノイド切除術に加えて、口蓋垂口蓋咽頭形成術(UPPP:下図)も有効です。
鼻の通りが悪い場合は、鼻中隔矯正術や下甲介粘膜切除術を行います。
鼻の通りを良くすることで、CPAPやマウスピースで治療を行う場合でも装置装着の不快感が軽減され、効果が高まります。
鼻の手術については→こちら
マウスピース
SAS専用のマウスピースを作成する方法です。
一般的に上あごと下あごが固定したマウスピースを患者さんにあわせて作成します。
その際、下あごを上あごより前に固定することで気道の面積を広げます。
2004年度から健康保険が適応になりました。
生活習慣の改善
ご自分の生活を見直すことがSAS治療の第一歩です。本格的な治療に入る前に、まずは生活習慣の改善に取り組みましょう。
生活習慣の改善
まず、本格的な治療に入る前に生活習慣を見直しましょう。
高血圧症の治療同様、運動療法やアルコールの制限を行います。
ダイエット
肥満の場合、首回りにも脂肪が沈着するため、気道の狭窄が生じます。食事療法や運動療法を実施し、体重が減量されることで、軌道の狭窄が軽減し、無呼吸も改善が見込まれます。ダイエットに成功した方は、体型を維持するよう努めましょう。
アルコールの制限
アルコールの過剰摂取は血圧を上昇させるだけでなく、上気道の筋力を低下させ、無呼吸を助長します。適度な飲酒を心がけ飲み過ぎに注意しましょう。また就寝前の飲酒は避けるよう心がけましょう。
禁煙
飲酒と同様に、喫煙も高血圧と無呼吸を助長します。血液中の酸素濃度を低下させ、脳にいく酸素が減りストレスがかかります。また、のどの炎症を引き起こすことで上気道が狭くなり、無呼吸の悪化につながります。禁煙をがんばりましょう。
ご自分で禁煙する自信のない方は、禁煙外来(保険診療)を受診されるのもいいかもしれません。
精神安定剤などの調整
精神安定剤や睡眠薬の内服で、上気道の筋肉が弛緩し、無呼吸が引き起こされる場合があります。初診時には精神安定剤や睡眠薬、高血圧のお薬など、現在服用しているお薬の情報を教えてください。内服薬の調整を行うことで、無呼吸が改善することがあります。
セルフチェック
あなたのいびきが健康に影響するものかチェックしてみましょう。
次の項目に「Yes」「No」で答えてみましょう。