アレルギーについて
私たちの体には、免疫機能(反応)が備わっています。ウイルスや細菌などの異物が体内に入ってきた時に、これら外敵を撃退しようと攻撃をしかけます。しかしながら、この免疫機能は、食べ物や花粉など体に害を与えないとされるものまでも有害物質と認識して過剰に反応し、攻撃してしまうことがあります。その結果、本来であれば体を守るはずの免疫反応が、自分自身を傷つけてしまう。これがアレルギー(反応)です。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎の3大症状はくしゃみ・鼻水・鼻づまりです。アレルギー性結膜炎も併発し、目のかゆみ・涙目がでることもあります。
アレルギー症状を引き起こす原因となる物質(アレルゲン)を吸入することで、アレルゲンと抗体が鼻の粘膜で反応し、鼻症状をひきおこすというのがアレルギー性鼻炎のメカニズムです。風邪とは異なり、のどの痛みや発熱は伴いません。主なアレルゲンとしてハウスダスト(家のほこり)、ダニのフン・死骸、ペット(イヌやネコ)の毛やフケ、カビがあり、1年を通して症状が出るため、通年性アレルギーと呼ばれます。
花粉症もアレルギー性鼻炎のひとつですが、こちらは花粉の飛ぶ季節に限定される症状ですので季節性アレルギーと呼ばれます。スギやヒノキの春の花粉症は有名ですが、夏はカモガヤ(イネ科の雑草)、秋はヨモギやブタクサの花粉症にも注意が必要です。
アレルギー性鼻炎の治療でまず行うべきことは、アレルゲンを吸入しないようにすることが重要です。そのような環境を整えていても症状が出現するのであれば、まずは点鼻薬(鼻スプレー)と目薬から治療を開始しましょう。点鼻薬は夜の入浴後に鼻をかんだ後に、鼻の粘膜にしっかり吹きかけると効果が得られます。噴霧のあとはすぐに鼻をかまないようにすることも重要です。
鼻水やくしゃみの症状の改善が乏しければ、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)の内服を、鼻づまりが強い場合は血管収縮薬や抗ロイコトリエン拮抗薬の内服を検討しましょう。
また鼻洗浄器を使用して生理食塩水で鼻うがいを行うこともおすすめです。
くしゃみや鼻水の反応が強い場合は内視鏡下で後鼻神経切断術を、粘膜の肥厚が強く鼻づまりがひどい場合は内視鏡下で鼻腔粘膜切除術を行ってもよいでしょう。
下甲介粘膜切除術・後鼻神経切断術については→こちら
花粉症
花粉(スギやヒノキなどの植物)が原因となって、アレルギー症状を引き起こす疾患が花粉症です。主な症状は、立て続けに何回も出るくしゃみ、透明でサラサラした鼻水、両側の鼻づまり、鼻やのどのかゆみ、目のかゆみです。鼻水や鼻づまりに伴ってにおいの低下や頭重感、集中力の低下、呼吸苦が出現することもあります。
花粉症はハウスダストやダニ、カビのアレルギーのような1年を通じて症状が起きる通年性アレルギーとは異なり、花粉が飛び交う時期に限定されることから季節性アレルギーと呼ばれます。
関東における主な花粉症原因植物の開花期は、下記の図の通りですが、大まかには
春→ハンノキ、スギ、ヒノキ
夏→カモガヤ
秋→ブタクサ、ヨモギ
と大別できます。
千葉において、スギ花粉はバレンタインデー(2月中旬)から本格化し、3月初旬がピーク、4月いっぱいまで続きます。スギ花粉症の方はヒノキ花粉症を合併することが多く、ヒノキ花粉は3月初旬から本格化、4月初旬がピーク、ゴールデンウィーク明け(5月上旬)まで続きます。カモガヤ花粉は5月から6月、ブタクサやヨモギは8月から10月に注意が必要です。
治療でまず行うべきことは、アレルゲンを吸入しないようにすることが重要です。
- 外出時は完全防備を、帰宅時は玄関でシャットアウト
- マスクや花粉症用メガネ、帽子、コートなどを着用し、帰宅時には服に付着した花粉を外でしっかり払落し、玄関より室内へ花粉を持ち込まないようにしましょう。
- 帰宅後は洗顔や鼻うがいを
- 体についた花粉を洗い流すといいでしょう。洗顔や鼻うがいだけでなく、早めの入浴も効果的です。
- コンタクトはやめてメガネに
- アレルギー性結膜炎も発症し目のかゆみのある方は、コンタクトはできる限り使用せず、メガネの装用を心がけましょう。
- 外出を控えめに
- 以下のような花粉の飛散が多い日はできる限り外出は控えましょう。
晴れまたは曇り、気温が高い、湿度が低い、南風が吹く、前日が雨。
- 以下のような花粉の飛散が多い日はできる限り外出は控えましょう。
- 家の中では
- ドアや窓をきちんと閉めて花粉が室内に入らないようにしましょう。掃除もこまめに、フローリングは拭き掃除も行いましょう。布団は外には干さないように、また枕元の花粉も少し湿らせたタオルできれいにふき取りましょう。空気清浄機で花粉を吸い取り、加湿器を用いて部屋の湿度を50%程度に保ちましょう。
上記を徹底しても症状が落ち着かなければ、まずは点鼻薬(鼻スプレー)と目薬から治療を開始しましょう。点鼻薬は夜の入浴後に鼻をかんだ後に、鼻の粘膜にしっかり吹きかけると効果が得られます。噴霧のあとはすぐに鼻をかまないようにすることも重要です。
鼻水やくしゃみの症状の改善が乏しければ、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)の内服を、鼻づまりが強い場合は血管収縮薬や抗ロイコトリエン拮抗薬の内服を検討しましょう。
また鼻洗浄器を使用して生理食塩水で鼻うがいを行うこともおすすめです。
くしゃみや鼻水の反応が強い場合は内視鏡下で後鼻神経切断術を、粘膜の肥厚が強く鼻づまりがひどい場合は内視鏡下で鼻腔粘膜切除術を行ってもよいでしょう。
下甲介粘膜切除術・後鼻神経切断術については→こちら
花粉症では症状が出る前からの治療が認められています。花粉が飛び始める少し前(2週間くらい前)から「初期療法」を始めておくと、症状の発現を遅らせ、花粉症シーズン中の症状を和らげる効果が期待できます。
しかしながら、最近は効果発現までの期間が短い薬が多く発売されているため、症状が出始めてから治療開始しても問題ないでしょう。
舌下免疫療法
舌下免疫療法とは
スギ花粉症とダニによる通年性アレルギー性鼻炎の治療法のひとつにアレルゲン免疫療法があります。アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因となっているアレルゲン(スギやダニのエキス)を少量から投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげ、日常生活に与える影響を改善する効果が期待されます。最近では、舌の下で治療薬を保持する『舌下免疫療法』のお薬が登場し、自宅で服用できるようになりました。
舌下免疫療法がすすめられるかた
- 抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン拮抗薬の内服やステロイド点鼻を使用してもアレルギー症状が抑えられないかた
- 上記のお薬で眠気や口の渇きなど副作用が強いかた
- スギやダニのアレルギーを根本から克服したいかた
期待できる効果
治療を開始して数か月後から効果が期待されます。3~5年継続することで最大の効果が得られます。
- くしゃみ・鼻水・鼻づまりの改善
- 涙目・目のかゆみの改善
- アレルギー治療薬(内服・点鼻・点眼)の減量
- QOL(生活の質)の改善
副反応
- 主な副反応
- 口の中のむくみ、腫れ、かゆみ、不快感、異常感
唇の腫れ
のどの刺激感、不快感
耳のかゆみ など
- 口の中のむくみ、腫れ、かゆみ、不快感、異常感
- 重大な副反応
- アナフィラキシー
*急性の過敏反応:医薬品投与後30分以内に起きることがあり、蕁麻疹などの皮膚症状や腹痛・嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状、突然のショック症状(血圧低下・意識障害)がみられる。適切な処置により、ほとんどが後遺症なく回復する。
- アナフィラキシー
治療の流れ
①診察と検査
耳鼻咽喉科診察と検査(血液検査・副鼻腔レントゲン検査・内視鏡検査など)を行い、スギ花粉症やダニによる通年性アレルギー性鼻炎を診断します。
②血液検査結果説明とお薬の初回投与
初診から1週間後以降で血液検査の結果をふまえて舌下免疫療法の適応と判断されれば、初回のお薬の投与は医師の監督のもと行います。投与後30分は院内に滞在し、副反応が出現しないか経過観察を行います。
③自宅で服用・定期通院
2日目以降は低量のお薬を自宅で服用し、1週間で再診、2週目からは定量のお薬に切り替え自宅で服用を継続し、2~4週間おきの通院が望まれます。治療開始後数か月から効果が期待され、最大効果を得るには3~5年の服用が推奨されています。
治療開始時期
ダニに対する治療はいつの時期からでも開始できます。
スギ花粉に対する治療開始は、スギ花粉の飛散時期(1月~5月上旬)は過敏状態であり避ける必要があるため、例年ゴールデンウイーク明けから治療開始希望を受け付けております。
ご希望の方は必ずWEB予約から『舌下免疫療法初回枠』をご予約のうえご来院ください。1ヵ月前から予約可能です。電話でのご予約は受け付けておりません。また『舌下免疫療法初回枠』以外での治療開始も受け付けておりません。薬剤が確保できない場合(日によって変動します)はご受診いただいても開始できませんのでご了承のうえご来院ください。
- 舌下免疫療法について詳しく知りたい方は下記専用サイト(鳥居薬品)をご覧ください。
注意点
5歳以上65歳未満でスギ花粉・ダニそれぞれ血液検査で特異的IgE抗体価がクラス2以上のかたが対象です。
抗IgE抗体製剤(ゾレア®)の皮下注射
ゾレア®とは
生物学的製剤の抗IgE抗体製剤です。生物から産生されるたんぱく質などを応用して作られた医薬品です。標的となるIgEを選択的に結合することでスギ花粉症の症状のみを抑えることができ、有害反応は出にくいとされています。抗IgE抗体を定期的に皮下注射することでIgEが肥満細胞に結合するのを阻害し、肥満細胞からの化学物質(ヒスタミンやロイコトリエンなど)の放出を抑制することで、スギ花粉症の症状を根本から抑えることができます。
ゾレア®がすすめられるかた
- 抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン拮抗薬の内服やステロイド点鼻を使用しても症状が抑えられない重症・最重症のスギ花粉症のかた
副反応
- 主な副反応
- 注射部位の赤み、腫れ、かゆみ、痛み、硬結、出血など
- 重大な副作用
- アナフィラキシー
*急性の過敏反応:医薬品投与後30分以内に起きることがあり、蕁麻疹などの皮膚症状や腹痛・嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状、突然のショック症状(血圧低下・意識障害)がみられる。適切な処置により、ほとんどが後遺症なく回復する。
- アナフィラキシー
治療の流れ
①初診
耳鼻咽喉科診察と検査(血液検査・副鼻腔レントゲン検査・内視鏡検査など)を行い、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン拮抗薬の内服やステロイド点鼻により治療を開始します。
②2回目の診察
初診から1週間後以降で検査結果と内服・点鼻での治療効果をふまえて、既存治療で効果不十分な重症・最重症のスギ花粉症と診断されれば、ゾレア®の適応と判断します。
ゾレア®の投与量決定のために再度血液検査を行います。
③3回目の診察
さらに1週間後に再診頂き、血液検査結果と体重から決定されるゾレア®の投与量(75~600㎎)と投与間隔(2週もしくは4週)、自己負担額(薬剤費のみ3割負担:4444~34976円)をお伝えします。
④4回目の診察
早ければ数日後に再診頂き、前回診察時に決定した投与量のゾレア®を院内で皮下注射を行います。初回注射後は15分は院内に滞在し、副反応が出現しないか経過観察を行います。
⑤2〜4週おきに通院
スギ花粉症の症状がおさまる5月末まで繰り返しゾレア®️の注射が可能です。
治療可能時期
ゾレア®はスギ花粉の飛散時期である1月から5月に投与を行います。
注意点
- 12歳以上で、体重が20~150㎏のかたが対象です。
- スギ花粉抗原に対する特異的IgE抗体価がクラス3以上かつ総IgE値が30~1500IU/㎖であるかたが対象です。
- 治療期間としては臨床試験により12週間が推奨されており、また治療効果を最大限とするためには遅くとも3月には治療を開始することが推奨されております。
- 保険診療においてゾレア®皮下注射を行う場合は、治療ガイドラインで抗ヒスタミン薬との併用が義務付けられています。
- 治療は杉﨑医師が担当しております。外来担当日はトップページの外来担当医をご確認ください。
ゾレア®について、詳しくは専用サイト(ゾレア季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)でお悩みの患者さまとご家族の方へ:ノバルティスファーマ)をご覧ください。